サンはピケの様子を見て何か力になりたいと思ったのです。
ピケはサンに手紙とデザイン画を見せ、ねこのぬいぐるみを作りたいことを伝えました。
するとサンは、自分の作業場にピケを連れて行き言いました。
「僕はいつもこれでやっているんだ。貸してごらん。」
サンはぬいぐるみを作るときは、自分で作った「ぬいぐるみチクチク機」を使っているというのです。
ピケはそんな機械があることも初めて知りましたし、サンがそんな機械を自分で作った事も初めて知りました。
サンは生地を縫いながら言いました。「ほら、君も知っていると思うけど、僕、丁寧に仕事をする事が得意じゃないだろ?だからさ、考えたんだよ。機械にやってもらえば常に一定の品質を保てる!だから機械を作ろう!って。」
ピケも覚えていました。去年、サンは工房長のニックにひとつひとつのプレゼントをもっと丁寧に仕上げるよう散々怒られていました。でもあれ以来サンがこんなにも工夫して仕事をしていた事は今まで知りませんでした。
そして、ゆきのようにふさふさの白い毛並みの生地は、あっという間にねこのぬいぐるみの形になりました。
「ありがとう!サン!君は本当にすごいよ!!」
ピケは先ほどよりも軽い足取りで、自分の作業場に戻りました。
次はサファイアのような青い瞳です。
瞳になるパーツを磨いて、美しく輝くようにしなければなりません。
ピケはいつものようにヤスリを取り出し、磨き始めました。ギュリギュリ、ギュリギュリ。
何度も磨いているうちに指が痛くなってきましたが、休むわけにはいきません。
ピケは汗をふきふき、一心不乱に磨き続けました。
すると今度は、後ろからスーマに声をかけられました。
スーマもピケの姿を見て、何か力になりたいと思ったのです。
ピケはスーマに手紙とデザイン画を見せ、ねこのぬいぐるみの瞳を作りたい事を伝えました。
するとスーマは「交代するよ。僕が磨いている間に君は腹ごしらえして一休みするといいよ」と言って、パーツ磨きの作業を交代してくれました。
朝から何も食べていなかったピケは、スーマに感謝し、パンを口に含みながら、ジンジンと痛む指先をほぐしました。
スーマはピケの隣で、パーツを磨いています。しかし、ピケの磨き方とは少し違うのです。
少し磨いては、窓から差し込む日の光にパーツを照らし、何か考えた後にまた磨く。何度も何度も席を立つスーマを不思議に思い、ピケは尋ねました。
「さっきから何度も席を立っているけれど、一体君は何を見ているんだい?」
すると、スーマは驚いた様子で答えました。
「何を見ているって、最も美しく輝かせる為の磨き具合さ。もっとも輝く磨き方はモノによって違うのさ。ただやみくもに力を込めて磨くだけじゃ魅力を引き出せない。より素敵な輝きを放たせるための磨き方を考えながら磨いているのさ。」
ピケは雷に打たれたような気持ちになりました。
なぜなら、今までそんな事を考えてパーツを磨いた事が一度もなかったからです。
「パーツは力を込めて磨けば磨くほど輝くものだと思っていたよ!」
「いいや、ストレスをかけ過ぎたら、輝くものも輝けなくなる。サンタと一緒さ。いろんなサンタがいる様に、パーツもモノによって違うんだ。光が当たって欲しい場所に光が届くように磨いてやればそのパーツは本物の宝石以上に輝き始める。ほら、みてごらん。」
そう言われてスーマの右手に目をやると、本物の青いサファイア以上にきらきらと輝くねこの瞳のパーツが2つのっていました。
その輝きは、ピケの言葉を奪ってしまうほどでした。ピケはしばらく時が経つのも忘れてしまうほどそのきらきらと光る美しい宝石を見つめていました。
ピケは言葉にしようとすると消えてしまいそうな感動を胸にしまい、スーマにお礼をいいました。
「ありがとう。スーマ。本当に助かったよ!」
ピケは二つの宝石を大切に受取り、ねこのぬいぐるみにそっと縫い付けました。
あとはにゃーにゃーと鳴くかわいらしい声です。